旅館やホテルを営む方の多くが、今こんな状況に直面しているのではないでしょうか。楽天トラベルやじゃらんには高評価の口コミがそれなりについているものの、Google口コミは数件しかない。せっかく良いサービスを提供しているのに、Googleマップで検索した人には魅力が伝わりきらない。一方で、OTAの口コミを増やそうと力を入れると、今度はGoogle口コミがおろそかになってしまう。
現実として、宿泊業界ではOTA経由の予約が売上の大部分を占めているケースが多い。しかしここ数年、直前予約やビジネス利用でGoogleマップから宿泊先を探すお客様も確実に増えている。両方の評価を並行して積み上げていかなければ、機会損失が広がっていく。
なぜ旅館・ホテルはGoogle口コミが少ないのか
多くの宿泊施設がGoogle口コミで苦戦する背景には、お客様との接点の構造的な違いがある。飲食店や美容室と異なり、旅館やホテルは滞在時間が長く、接客担当者も複数に分かれる。チェックイン時のフロント、夕食時の仲居さん、朝食会場のスタッフと、お客様が接する人が次々と変わっていく中で、誰がどのタイミングで口コミをお願いするのか。その仕組みが明確でない施設がほとんどだ。
加えて、宿泊業界では長年OTAの評価システムに慣れ親しんでいる。予約完了後にOTAから送られてくる評価依頼メールに対して、お客様も一定の率で応じてくれる。その流れが当たり前になっているため、Google口コミまで意識が向かない。結果として、OTA評価は4.2や4.3をキープしているのに、Google口コミは3.8で止まっているような状況が生まれる。
お客様の立場で考えても、宿泊体験は複合的だ。部屋の清潔感、料理の質、温泉の気持ちよさ、スタッフの対応と、評価したいポイントが多岐にわたる。だからこそ丁寧に書こうとすると時間がかかり、結果的にOTAの評価だけで済ませてしまう人が多い。
チェックアウト時の導線を整える
Google口コミとOTAの評価を両立させる最初の打ち手は、チェックアウト時の導線設計にある。多くの旅館やホテルでは、お見送りの際に「ありがとうございました」で終わってしまうが、ここに一工夫加える。
フロントスタッフがお会計を済ませた後、お客様に小さなカードを渡す。そこにはQRコードが2つ印刷されている。1つはGoogle口コミ用、もう1つはOTA評価用だ。「お時間のある時で結構ですので、今回のご滞在はいかがでしたでしょうか。こちらから感想をお聞かせいただけると嬉しいです」と一言添える。
このとき、どちらか一方を優先するような言い方は避ける。「可能でしたら両方に」といった表現も、お客様にとってはプレッシャーになりかねない。あくまで選択肢を提示するスタンスを保つ。実際のところ、お客様によって使い慣れているプラットフォームは異なる。普段からGoogleマップを使っている人もいれば、旅行の際は必ずOTAで評価を書く習慣のある人もいる。
QRコードで口コミ獲得率が3倍に?導入事例と効果を検証で詳しく触れているが、QRコードを使った導線は宿泊業界でも効果を発揮する。特に最近では、コロナ禍を経てQRコードへの抵抗感が薄れており、中高年のお客様でもスムーズに読み取ってもらえるケースが増えている。
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口コミを書いてもらう上で、お客様が「何を書いたらよいかわからない」状態にならないよう、滞在中の体験を分かりやすく整理してあげることも重要だ。チェックイン時に渡す館内案内に、さりげなく「お客様の声でよくいただくポイント」を記載する。
例えば、「檜の大浴場からの景色」「地元食材を使った会席料理」「スタッフの心のこもったおもてなし」といった具合に、その旅館ならではの特徴を3〜4つピックアップする。これにより、お客様は滞在中に「ここが良かった」「あそこは印象的だった」と意識的に体験を記憶に留めやすくなる。
口コミの内容が具体的になれば、それを読む次のお客様にとっても有益な情報となる。「温泉が良かった」だけでなく「夜の露天風呂から見える星空が素晴らしく、都会では味わえない贅沢な時間を過ごせました」のように書いてもらえれば、その旅館の魅力がより伝わりやすい。
OTAとGoogleで評価のタイミングをずらす
実務的な工夫として、OTA評価とGoogle口コミの依頼タイミングを意図的にずらすという方法がある。多くのOTAでは、チェックアウト後1〜2日でお客様に評価依頼のメールが届く。この流れを把握した上で、Google口コミのお願いは滞在中または当日中に済ませておく。
宿泊当日の夕食後、部屋に戻られたお客様に対して、仲居さんや客室係が「本日はいかがでしたでしょうか。もしよろしければ、Googleでご感想をお聞かせください」と声をかける。この段階では、まだお客様の宿泊体験は完了していないが、夕食や温泉を体験した直後であれば、印象が鮮明な状態で口コミを書いてもらえる。
翌朝のチェックアウト時には、改めてOTA評価のお願いをする。「昨夜はお疲れさまでした。お時間のある際に、ご予約いただいたサイトでも評価をいただけると大変ありがたいです」といった具合だ。このように時間差を設けることで、お客様にとっては2回の依頼が別々の体験として認識され、負担感が軽減される。
スタッフ間での情報共有を密にする
旅館やホテルでGoogle口コミとOTA評価の両立を図る上で見落としがちなのが、スタッフ間での情報共有体制だ。フロント、客室係、料飲部門と部署が分かれている中で、お客様の満足度や特別なエピソードを全スタッフが把握しきれていないケースが多い。
例えば、夕食時にお客様から「料理が本当に美味しくて感動した」という声があったとする。その情報が翌朝のチェックアウト担当者まで伝わっていれば、「昨夜のお食事、お気に召していただけたようで良かったです。もしよろしければ、その感動を口コミでも教えていただけると嬉しいです」と自然な流れで評価をお願いできる。
反対に、何らかのご不満を抱えたお客様に対しても、事前に情報が共有されていれば適切なフォローが可能だ。チェックアウト時に改めてお詫びし、改善に努める旨をお伝えした上で、「もしご評価をいただく機会がありましたら、率直なご意見をお聞かせください。今後のサービス向上に活かさせていただきます」と伝える。
このような情報共有は、朝のミーティングやスタッフ専用の連絡ツールを活用すれば実現できる。お客様一人ひとりの滞在体験を施設全体で把握し、それぞれに応じた口コミ依頼を行うことで、より自然で効果的な評価獲得につながる。
返信対応で両方の価値を高める
Google口コミとOTA評価の両立において、投稿された後の返信対応も重要な要素だ。多くの宿泊施設では、OTAの評価には丁寧に返信するものの、Google口コミへの返信は後回しになりがちだ。しかし、Googleマップ上での返信は、その口コミを読む次のお客様に対しても大きな印象を与える。
ChatGPTで口コミ返信を効率化|プロンプトテンプレート付きでも触れているが、返信作業の効率化は可能だ。ただし、旅館やホテルの場合は、お客様の滞在体験が個別性の高いものであるため、テンプレート的な返信では物足りない。
具体的には、口コミの中で言及された料理名や部屋タイプ、利用された施設名を返信の中でも使う。「露天風呂からの景色をお気に入りいただけたようで」「特選和牛のしゃぶしゃぶにご満足いただき」といった具体的な要素を含めることで、お客様にとっても、それを読む第三者にとっても、より印象に残る返信となる。
さらに、Google口コミとOTA評価の両方に投稿してくださったお客様には、それぞれで異なる角度からの返信を心がける。全く同じ文面では手抜き感が伝わってしまうし、お客様によっては両方の返信を目にすることもある。片方では料理について、もう片方では接客についてお礼を述べるなど、バランスよく対応することで、施設全体の魅力をより多面的に伝えることができる。
宿泊業界において、Google口コミとOTA評価は決して対立する概念ではない。むしろ、それぞれ異なる顧客層にリーチし、異なるタイミングで施設の魅力を伝える重要な手段だ。少しの工夫と継続的な取り組みによって、両方の評価を着実に積み上げていくことは十分に可能といえる。